Dencunアップグレード半年後：イーサリアムL2の実際の状況

昨年3月のDencunアップグレードを覚えていますか？当時、暗号資産界隈では大きな話題となり、「L2コストが激減する」「ETHが飛躍する」といった声が多く上がっていました。今こそ、そのアップグレードが実際に何を変えたのかを振り返るべき時です。

アップグレードの核心：EIP-4844は何をしたのか

簡単に言えば、Dencunアップグレードの目玉はEIP-4844（Blobトランザクション）です。この仕組みにより、L2がメインネットにデータを投稿するための「専用チャネル」——Blobストレージスペースが設けられました。わかりやすく言うと、以前はL2がトランザクションデータをEthereumに書き込む際の手数料が非常に高かったのですが、Blobの登場により、そのコストが従来の約1/1000にまで削減されました。

これは非常に大きな変化に聞こえますが、実際の効果が重要です。

半年間の効果まとめ

コストは確かに下がった

• OptimismやArbitrumなど主要L2のトランザクション手数料は実際に50〜80%下落
• ただし「1/1000」という数字は理想的な状況であり、実際にはBlobの需要により大きく変動

エコシステムの活性化

• 低いgas代が高頻度取引需要（DeFi取引やゲームのオンチェーン操作）を刺激
• OP Stackエコシステムのプロジェクト数は増加したが、TVLの伸びは期待ほどではない
• ZK系L2（StarkNet、zkSync）は開発者の注目を集めるも、ユーザー移行のスピードは緩やか

投資家の反応は控えめ

• OP、ARBなどL2トークンにはポジティブな材料があったものの、価格上昇は想定ほどではなかった
• 大口資金はBTC ETFやAI関連に注目しており、Ethereumのシステム的な改善は市場の主役になりにくい

依然として残る課題

1. Blob容量の上限：安くなったとはいえ、Blobの投稿スペースには限りがあり、ピーク時には依然として混雑が発生

2. ユーザー体験の二極化：ライトユーザーは恩恵を受けているが、高頻度トレーダーやクジラは依然としてCEXを利用し、L2には本格移行していない

3. L2の分散効果：アップグレードで全てのL2が安くなったことにより、かえってエコシステムの断片化が進み、ユーザーの選択が難しくなった

今後の展望

Dencunアップグレードは「劇的な逆転」ではなく、「タイムリーな損切り」に近いものです。確かにL2の最大のコスト課題は解決しましたが、EthereumがAIやRWAなど新たなトレンドの中で自身の役割をどう再定義するかが今後の鍵になります。

Layer2エコシステムに注目しているなら、Dencunアップグレード後の現状はこうです：コスト問題はほぼ解決、これからはアプリケーションエコシステムの競争が本番。